第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
《 ——しもし?もしもし、龍? 》
「ご、ごめん!携帯落としちゃって!」
《 大丈夫?もしかして取り込み中だった? 》
「ううん。大丈夫。
実は、俺もエリに電話をかけようとしてたんだ。そこへタイミング良く君から着信が入ったから、驚いて落としちゃった」
《 ふふ。いいって、そういうのは 》
「本当なんだけどな…」
俺の心は、さらに踊った。連絡をくれたのは、春人ではなくエリだったから。
もし仕事絡みの電話なら、彼女は敬語を使うはず。しかし、そうではないところを見ると、プライベートな用向きなのだろう。
俺が、どうしたの?と 問い掛ける前に、彼女は切り出した。
《 龍、今日の予定って何か決まってる? 》
「え? うーん…予定らしい予定はない、かな。
これからジムに行って、それから家の掃除とか、家事を片付けようかなって思ってたくらいで」
《 ジムか。それ、私も行っていい? 》
「え!エリも?もちろん良いよ!」
《 良かった。いつものシルバージムだよね 》
「よく知ってるな!あそこのジムを たまに利用してるって、俺 エリに話したことあった?」
《 直接は聞いてないけど、知ってるよ。龍の事だからね 》
「え」
《 1時間後に現地待ち合わせでいい? 》
「あ、うん!大丈夫」
《 ありがとう。楽しみにしてるね。じゃあ、また後で 》
彼女は最後にそう言うと、通話を終了させた。
未だ耳に当てたままの携帯から、ツー ツーと電子音が聞こえて来ても。俺はしばらく動けずにいた。
今日の予定は?私も行っていい?待ち合わせ。楽しみにしてる。また後で。
そんな会話の流れが、頭の中でリピートしてる。
こんなのは、まるで…
これからデートする、恋人みたいだ。
それに加えて “ 龍の事だから ” という言葉。
分かっている。
TRIGGERのメンバーである十龍之介の事だから、それくらいの把握は仕事の範疇だ。
という意味だという事くらい。
それでも…これからエリに会えるというだけで、俺はご機嫌だ。
「…やっぱりシャワー、浴びようかな」
寝癖はとうに直っていたが、俺は浴室に向かったのだった。