第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
彼女は言った。
“ 人が人を好きになって追い掛けるのに、権利なんて必要ない。勝手に好きになって、勝手に追い掛ける。それが恋だ ” と。
【57章 1340ページ】
今更ながら、本当にその通りだと思う。
だって俺は、彼女の気持ちなど御構い無しに、エリを追い掛けているのだから。
こんな想いは、向こうにしてみれば迷惑でしかないというのに。
だって、エリには 好きな人がいる。
万理と彼女の会話を思い出す度に、胸が痛んだ。
彼女の想い人が誰なのかを想像するだけで、胸が軋んだ。
かと思えば、気が付いたらエリと会う算段を講じていたりする。
今だって、彼女に電話をしたい気持ちと葛藤しているのだ。
デートに誘うのは、さすがに迷惑だろうか?ならば、食事くらいなら付き合ってもらえるだろうか?
さっきまで苦しさに喘いでいたというのに、今度は そんな淡い期待を胸に抱いている。
自分の気持ちや思考が、あっちへ行ったりこっちへ来たり。忙しいったらない。
これだから、恋は厄介だ。
「電話…かけたら、出てくれるかな」
スマホのディスプレイに目を落とした、その時だ。ぱっと画面が明るくなる。そこに映し出された名前は、中崎春人。
まさかのエリであった。
「えっ、うわ!」
早く出なければ!どうして彼女の方から連絡が?
そんな焦りと驚きのせいで、俺はつるりと手を滑らせてしまう。通話開始のボタンは押していたので、きっとエリの耳には、携帯の落下音が盛大に響いてしまった事だろう。