第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
【side 十龍之介】
アラームをセットしないで眠りに就いたのは、いつぶりだろう。
翌朝、自然に目が覚めてから時計を確認する。時刻は午前8時。普段よりは遅めだが、惰眠を貪ったという時間でもない。
半身を起こし、ぐっと上へ伸びる。
「ん…っ、良い朝だ」
爆発した頭を直すため、浴室の方へと向かう。シャワーを浴びようかとも思ったが、結局は洗面台 備え付けのシャワーノズルを引いた。
お湯を頭から被りながら、昨日考えておいた本日の予定をおさらいする。
今日はオフだ。
溜まった家事を片付けるのと、気分転換にジムで汗を流す。これくらいしか用事を思い付かなかった自分。少し虚しい。
「そういえば、エリも今日はオフだって言ってたな…」
独りごちながら、バスタオルでわしわしと髪を拭き上げる。
ただの独り言だというのに、彼女の名前を呼ぶだけで 胸がほんわりと温かくなるのを感じた。
仕事がない日を、こんなにも寂しいと感じるようになったのは、いつからだったろうか…
かつて、家族以外の誰かに、こんなにも会いたいと切望した事はあっただろうか…
「……はぁ」
俺の熱い溜息は、一人きりの部屋に溶けた。