第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
百は言った。
今夜20時、自宅に来てくれ。と。
私は言われた通りの時間に、彼のマンションに到着した。指示された場所にバイクを停め。オートロックパネルの前に立つ。
周りに人がいない事を確認してから、部屋番号をタッチする。
《時間ピッタリ!いま開けるねー!》
百の明るい声が、フロア中に響き渡った。私は思わずもう一度、辺りに人の気配がないか確認した。
1人で乗るには広すぎるエレベーターに乗り込み、考える。
とりあえず彼に会ったら、インターホンで話す際には大きな声はやめるよう忠告しよう。
あんな無警戒では、すぐにRe:valeの百がこのマンションに住んでいると広まってしまう…。
あっという間に、目的の扉の前に到着。
しかし、何度インターホンを押しても返事がない。
『??』
ずっとここに立っているわけにはいかない。私はゆっくりとドアの取っ手を下げてみる。
鍵はかかっていないようなので、勝手に入らせてもらおう。
ガチャリ とドアを押して家に入ると、家中が暗い。しかし真っ暗ではない。
廊下には、いたるところにキャンドルが置かれているのだ。そして、百の姿は無い。
『な…なんだこれ』
私が1人ごちた瞬間、廊下に パァン!!という発砲音が響いた。
「いらっしゃーーい!待ってたよー!」
と 同時に 元気いっぱいな百が目の前に現れた。
どうやら彼がクラッカーを鳴らしたらしい。
クラッカーの中から飛び出したテープが、ひらひらと舞い落ちていく。
……キャンドルの上に!!
『え、あ、ちょっ!』
あっというまにキャンドルの火がテープに燃え移っていく。
「ありゃりゃ?もしかしてヤバイ?これ」
私は呑気に言ってる百を押しのけて、脱いだばかりのジャケットでバッサバサと風を起こして鎮火する。
まだ弱火だったので、火はなんとか消えたのだが…。
私はキッと百を睨み上げて言う。
『インターホンに出る時は、大きな声で話すのはやめなさい!』