第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
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「待ってたよー!あ、今度こそ1人だね!」
「受け持ちのアイドルを放り出して、悪い子だね。まぁ僕は悪い子が大好きだけど」
私が再度そこを訪れると、元気良く百が飛び出して来た。対する千は、相変わらず怪しげな微笑をたたえながら嬉しそうに言った。
『放り出してなんていません。撮影までには戻ります』
そう。ここでゆっくりしている時間など無い。私は早急に用向きを伝えようと 百に向き直る。
『予想はされているかもしれませんが、私がこうしてここに来た理由は…
今週号のMONDAYに、うちの十龍之介が載ってしまったからです』
やはり、私がこの話を持ってくると察しがついていたのだろう。2人は微動だにしない。
「そう。君がモモに助けを求めに来たという事は…。記事の担当者に会っても 事態は好転しなかったんだね」
『はい。事実無根な記事を書いたと、謝罪文を載せるよう言ったんですが 無駄でした』
私は、龍之介が今回どういう経緯で あの写真を撮られたのか。そして編集者に直接会って得た情報。あと、今はモデルの女性を探している事を伝えた。
「なるほどね。龍之介くんは見事にはめられたわけだ…」
そう言った千の顔からは、いつもの微笑は消えていた。思慮深い表情で考え込んでいる。
「話は分かった!全くもって酷い話だ!うん。
…それで?エリちゃんは、オレに何をご所望かな?」
『百さんのコネクションを使って、モデルの女性を見つけ出して欲しいんです』
私がこう答える事も、彼は既に分かっていたらしい。百は自信ありげな顔でこちらを見据えたまま頷いた。
『…私と、取り引きをして下さい。
もし百さんが私に、自分のコネクションを使うまでの価値があると 思ってくれるのなら』