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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第76章 知らず知らずの内に、同じ女に惚れていたんだな




『……』
(はぁ。先輩は、ひどい。
貴女は、最初から私がこの答えを導き出すと分かっていて、私と楽を窮地に追いやった)


私は、黙って演奏席に着く。楽は、その様子を見て 小さく頷いた。
私達の視線が、交錯する。そうして目を合わせれば、互いの言いたい事が伝わるようだった。


「……」
(曲が、決まったんだな。何でも来い。どんな曲だったとしても、俺が全力で歌い上げてやる)

『……』
(貴方ならきっと、この楽曲を、歌えるはず。だって、この曲は…楽、貴方が愛してやまない人の歌。貴方がずっとずっと、焦がれ続けた歌なのだから)


照明のトーンが落とされる。
それを合図に、私は鍵盤に指を沈めた。

伴奏が始まってすぐ、楽の瞳がゆらりと揺れた。たった数個の音の粒で、自分がこれから歌う曲を悟ったのだ。


『……』
(私も、聴きたいと思ってしまっている。この曲を、貴方が歌うのを)

「……」
(あぁ、そうか。春人。お前は、この曲を 選んだんだな。
最高の選択だ。こんな大舞台で、俺が、あいつの歌をうたえるなんて)


閉じていた瞼を、ゆっくりと持ち上げる楽。その神秘的とも言える雰囲気に、観客達は思わず息を飲んだ。


「退屈な 毎日。変わらない 日々に
ビルの間から 見える空。
見飽きた景色に うんざりするわ。

そんな私の世界を
貴方は簡単にひっくり返した。

まるで映画の One scene みたいじゃない?
甘い言葉で 私は 踊り出すの。
本当に こんなのは Dramatic!

運命 なんて言葉は嫌いだったはずなのに。
貴方の口から出た言葉なら
なんだって 食べてしまいたい。

走り出した2人は 止まれない。
全てがslow motion になる。
貴方も私と同じ気持ちなら…

どうせなら、もう取り返しのつかないくらい
遠いところまで私の事を 攫ってくれたら…

まるで映画の One scene みたいじゃない?
貴方の魔法で 私は 踊り出すの。
本当に こんなのは Dramatic!

あぁ…早く、早く私を
迎えに来て。連れ去ってよ」

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