第76章 知らず知らずの内に、同じ女に惚れていたんだな
「やっだぁ!久しぶりっ!!元気そうじゃない!ちょっと前まで部屋の中で腐って死にそうになってたのに!」
『先ぱ…MAKAさんも、お元気そうでなによりです』
ステージから飛ぶようにして降りて来たMAKAは、私に抱き付くと 頬にキスを落とした。
そして、楽にも同じように挨拶をした。
彼女は、バックで踊っていたダンサーやスタッフ達に、大きな声で休憩を告げた。
そして、広々とした彼女専用の控え室へと3人揃って移動した。
「こんな箱で単独ステージだろ。やっぱり、お前は凄いな。今日は呼んでくれて ありがとう」
「ふふ!ありがとう。2人の方こそ忙しいでしょうに、こんな遠い所まで来てくれて凄く嬉しい!
あ、あとお花もありがとうね!」
彼女には、TRIGGERの名前で祝い花を贈ってあった。MAKAの笑顔を見る限り、気に入ってもらえたようだ。
本番までに残された僅かな時間を、私達と話す事に使ってしまって良いのだろうか。そう問い掛けると、彼女は楽しそうに 幸せな時間だから問題ないと答えた。
その時。ノックもなしに、部屋の扉が開かれる。入って来たのは、フィリップだった。
「オウ!ソーリーね。ノックをするのを わすれちまったよ」
若干 変な日本語で謝罪した後、毛のない頭に手をやった。MAKAは、ドアの前に立つ彼の元へと駆け寄る。そして何やら、英語で会話を始めた。
ちらほらと単語が耳に入っては来るものの、何を話しているのかまでは分からない。
どことなく親しげな2人を、何気なく私達は視界に入れていた。
すると…
フィリップとMAKAは、なんとも海外らしいキスを交わしたではないか。
「『!?』」
その、挨拶ではない種類の口付けに、私と楽は度肝を抜かれた。