第76章 知らず知らずの内に、同じ女に惚れていたんだな
ゲートを通過して空港から出れば、そこはまさに異世界だった。外国の匂いな気がする。背の高い植物が沢山生えている。空に浮かぶ太陽でさえ、日本で見ていたものとは別物であるかのようだ。
目新しい物づくめの海外に、ウキウキが止まらない。すれ違う人々の顔をチラチラと盗み見る。すると、かろうじて大切な部分を隠せている といった過激な服装のお姉さん達に、声を掛けられた。
ハーイと、手を振られたのだ。
無視をするのも気が引けるので、私もハーイ。と手を上げてみる。そしたら楽に、上げたばかりの手を掴まれて下される。
「おい!キョロキョロするなよ。恥ずかしいだろうが」
『海外に来る機会は、あまり無かったんで。色々と珍しいんですよ。
楽、見てください。色々な人種の方がいますね。ほら、そこの筋肉むきむきの黒い人なんて超強そうです。彼の名前は、絶対にボブですよ』
「ボブかは知らねぇけど、確かに厳つい身体つきしてるよな。ありゃ、龍の筋肉を超えてるかも…」
私と楽が ボブ(仮)をチラチラ見て会話していると、彼もこちらを見やる。私達の視線がバチっと交錯した。そしたらなんと、こっちに向かって歩いて来るではないか。
その大きな歩みに効果音を付けるなら、ドシン ドシンだ。
「お、おい。こっちに来るぞ、ボブが」
『うーん…。
“ なにガン飛ばしてくれとんねん、わりゃ ” とか言われちゃうんですかね、私達』
「ボブは関西人なのか?」
『…あの黒人マッチョに、私は勝てるのでしょうか』
「どうしてあんたは、そうすぐに戦闘に持ち込みたがるんだ。物騒な奴め」
とりあえず、楽の一歩前に出る。ボブは、私の前でピタリと歩みを止めた。
そして黒いサングラスを外せば、可愛らしい つぶらなお目めが現れる。