第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
「ねぇねぇユキ。結局エリちゃん、言いたい事何も言えなかったっぽくない?」
「このタイミングで、エリちゃんが話したい事といえば…多分 龍之介くんの記事の件だと思うけど。焦らなくても、きっと後で教えてくれるよ。
さっきは天くんが隣にいたからね」
「そうそれなんだって!なんだって天はわざわざエリちゃんについて来ちゃったと思う!?
それにさっきの あの態度…!オレがエリちゃんの話したら、いやいや自分の方がエリちゃんの事知ってますけどぉ?!みたいな感じで張り合って来たんだよね」
「きっと天くんも 僕達みたいにエリちゃんの事が大好きなんだろうね。可愛いじゃない」
「えぇ!?でも天は、エリちゃんの事を男だと思ってるんでしょ?」
「そうね。でも多分、もっと深いところ…本能的な部分では惹かれてるんだと思うよ。TRIGGERの中では、彼が一番早く気が付くだろうね…。春人という男が、本当は女の子だってこと」
「えーー!もし気付いちゃったら、どうなるのかな…?」
「ふふ。さぁ…そこまでは、さすがに僕にも分からない かな」
————
「今日の千さんの冗談は、いつもよりも強烈だった…」
エレベーターの中、順に点滅していく数字を見て 天は言った。
『…ええ。まったく、あの人は何を考えているのか』
本人も言っていた通り、私の反応を見て楽しんでいるのだ。そんな事をして何が楽しいのか全く分からない。ただのドSか。
「…キミは、もうRe:valeの2人には会わない方が良いんじゃない?」
『何故ですか?私があの2人に からかわれても、九条さんにさして火の粉は飛ばないですよね』
むしろRe:valeと私が懇意にする事は TRIGGERにとってはプラス面の方が大きいのでは?
「うるさいな。見ていて気分が良くないんだから仕方ないでしょ」
それは、どうしてだろう。私は一生懸命に脳を働かせて、天を理解しようとしてみるが。腑に落ちる答えは見つからない。
『どうして九条さんが、そんな気持ちに?』
ゴウンゴウンと、エレベーターが降下する音だけが2人を包む。
「………さぁ。なんで?」
天は不機嫌そうに首を傾げた。
いや 聞き返されても。私の方が質問しているのだが…。