第74章 高校生の時の、俺の彼女
「番組をご覧の皆さん、こんにちは。TRIGGERの、九条天です」
「こんにちは!同じく、十龍之介です。今日は3人揃って、番組にお邪魔します」
「八乙女楽だ。よろしくな!」
MEZZO"の2人に加え、TRIGGERもリハに加わる。
5人は、本番でどんなトークをするか 和気あいあいと話し合っていた。
私も万理も、そしてカメラマンやディレクターも、セット内の5人を見つめている。
そんな主役の彼らに、気を取られていた。そのせいで、察知するのが遅れてしまった。
“ 危険 ” が、すぐそこまで迫っていたことに。
「ぐ…っ、重い…」
そんな、呻き声が聞こえた時には もう遅かった。
声の主は、さきほど脚立を運んでいたADだ。今度は、大きな段ボール箱を2つ重ねて運搬している。あれでは、前が見えていないだろう。
前方がろくに見えていないであろう彼の前には、自立型照明。ADと照明の距離は、もうゼロに等しい。
『あぶ』
危ない。そう私が言おうとしたのと同時、彼は段ボールごと照明に体当たりした。
全てがスローモーションに見えた。
見る見る焦った物に変わるADの表情。異音に反応するスタッフや演者。ぐらりと傾く、眩しい光。
その照明の真隣に立つ万理が、そちらを振り向く様子。
彼に襲い掛かる、背の高い照明。
『万理!!』
自分でも驚くくらいの大声で、叫んでいた。