第74章 高校生の時の、俺の彼女
「なんだ!友達だったのか」
「……」
「友達だとしても、春人くんは やっぱりバレるのは嫌?」
若気の至りで 強引に、無慈悲に、一方的に断ち切った縁。今さらどんな顔をして、彼に向き合えばいいのか分からない。
もしかすると、万理は私の事など綺麗さっぱり忘れているかもしれない。と いうか、それが自然の成り行きだろう。なにせあれから、10年も経っているのだから。
でも。それでも私には、名乗り出る勇気はない。
それに…
『ふ、普通に、恥ずかしくないですか?
昔の女友達が、男の格好をして、澄ました顔して働いてんですよ?』
「澄ました顔も可愛いよ?」
「龍、問題はそこじゃない。
まぁ キミがそう思うなら、隠し通せばいいと思うよ」
「そうだね。俺も協力する。春人くんが、エリだってバレないように」
ありがたい申し出に、私は顔を輝かせる。しかし、すぐに無慈悲な天の言葉が飛んでくる。
「協力って?」
「壁になるよ!春人くんは、俺の後ろに隠れてて。顔を見られなければ、バレる事もないだろ?」
『天才』
「そう。じゃあ収録は龍抜きでやらないとね。ボクは構わないけど、周りの皆んなはどう思うかな。現場放棄して、マネージャーとプロデューサーの間で仁王立ちするキミを見て」
龍之介は、しゅんと下を向く。私も、悲しみのあまり目をきつく閉じた。
「春人くん…ごめん…!」
『…いいんです。ファンの皆さんも、龍のスーツ姿を楽しみにしているので…』
「……龍はともかくとして。キミの平常心をここまで奪う彼の存在は、どうも謎が多いね。
一体、どれくらい “ 特別 ” な、お友達だったのかな」