第74章 高校生の時の、俺の彼女
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「格好良い…ね。
俺には、あのお面のデザインを格好良いと思う感性はないかな」
「ち、違うんです!あのお面は、アクシデントなんですよ!TRIGGERさんも仰っていたように、いつものプロデューサーさんと、今日は違って…!」
「可愛い…ね。
環くんは、彼のあぁいう お茶目なところを感じ取って、そう言ってたの?」
「……」
(えりりんは、たぶん気付いてたんだ。バンちゃんが、俺らのマネージャーやってるって。
でもあぁやって、お面とか被ってたってことは…やっぱり、知られたくねぇんだよな。
高校んとき付き合ってた相手なのに、会いたくねぇのかな…)
「…はぁ。中崎さんに会うの、楽しみにしてたのに。
俺、嫌われてるのかなぁ」
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『ふぅ…驚きました』シュコーー
「お、ま、えなぁ…っ!
何ださっきのあれ!驚いたのはこっちだ!もの凄い恥かいたじゃねぇか…。シュコーシュコー言いやがって…
はぁ…。ちょっとトイレ行ってくっから、それまでに そのふざけた面、外しとけよ?」
大層ご立腹な楽は、大袈裟なため息を残して楽屋を出る。
彼に負けないくらいの大きな溜息を吐き、私は面を外した。
明るい室内に目が眩む。徐々に目が慣れてくると、こちらを覗き込む天と龍之介の心配顔が見て取れた。
「春人くん、平気?」
『……大丈夫、です。なんとか…ギリギリ』
「相変わらず素直じゃないよね。どう見ても大丈夫じゃないくせに。
で?どういう関係?」
天には、全てお見通しらしい。私があんな奇行を取ったのは、万理に顔を見られない為であると。
『えっと、旧友です。高校時代の』
嘘は、吐いていない。実際、彼とは友達をやっていた期間もあったのだ。むしろ、恋人期間よりそっちの方が長い。従って、今の答えの方が正解だ。
などと自分を騙くらかして、私は1人 頷いた。