第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
「妬いているんだよ、君とずっと一緒に居られるTRIGGERに。
君がピンチの時、1番に頼られるモモに。
だから、ちょっとだけエリちゃんが困ってる顔が見たくなったんだ」
寂しい唇に、冷ややかな笑いの影が落ちる。
普段なら、こんな面倒を言う男には 腹が立つのだろうが。不思議と千には そういう感情は湧いてこなかった。
『…千さん、貴方なかなかに歪んでいますね』
「そうね、それ よく言われる」
私をいじめたい。そうは言っても、きっと彼は 私が女である事をTRIGGERのメンバーにバラしたりはしないだろう。それだけは、何故か確信が持てた。
隣で会話を繰り広げている、天と百の声が耳に響く。何の話題かは知らないが 徐々にヒートアップしている様子だ。
私と千は、思わず彼らの会話に耳をそばだてる。
「いやいやマジだからね!プライベートで遊んだんだけど、ゲームでオレにやっと勝てた時、ヤッターー!サイコー!って、マジで言ってたんだって!春人ちゃんが!もう超負けず嫌いでさ!」
おいおい百。一体全体、天に何を暴露してくれちゃってるの。
「…プロデューサーが負けず嫌いなのは知っていますけど?
じゃあ百さんは、彼の弱点知っています?虫ですよ。虫が凄く苦手で、ゴキブリなんて目撃してしまえば 2メートル上まで逃げるんです」
おいおい天。人が勇気を出して晒した弱点を、そんな簡単に人に話すものではない。
「えぇっ それマジ!?何そのラブリーキュートなウィークポイントぉ!」
いや、そもそも彼らは何の話題で盛り上がっているのだ。
「なんの話で盛り上がってるの?春人ちゃんの可愛いところ 知ってます自慢。かな?」
ついには参戦してしまった千。
「そうそう!ユキもやるー?」
そうそうって!そんな話だったのか!
「ボ、ボクは…っ、か、可愛いとは言ってませんよ!」
うんうん。そうだよね。可愛いのは今の天の方だ。