第74章 高校生の時の、俺の彼女
「えっ」
「はあぁあぁーーー!?!?」
2人の驚き様を見て、はっとした。
俺は、何を口走っているんだ。情けない…いかに自分が動揺しているのか窺い知れる。
「あ…。ご、ごめん。いま言った事は、忘れてくれない?」
「いやいやいや!無理ですよ!!もう脳にキッチリと刻み込まれましたよ!!」
「嘘だ!!嘘だ嘘だ!…う、嘘だよなぁ?」
瞳孔ガン開きで詰め寄ってくる壮五。何故か涙目で詰め寄ってくる環。
どうやら、忘れてくれそうにはない。そりゃそうか。彼らは彼女の大ファンだ。まして、今や業界の謎となっているLio。そんな彼女と、付き合っていたなどと聞かされたら…流せるわけなどないだろう。
自分が蒔いた種だ。仕方がない…。恥ずかしい気持ちはあるが、話せる部分だけでも話してしまおう。
「…嘘じゃないよ。さっきは突然の事で、たぶん なんて言っちゃったけどね。
間違いない。俺が、エリの声を、歌を 聞き違えるはずなんてないから。
Lioは、中崎エリだ。
高校生の時の、俺の彼女」
「………っっ!!
す、凄い凄い!!まさか、Lioと知り合いだった人と会えるなんて!しかもこんな身近に!いやいや、それよりも恋人っ…!
環くん!!凄いよね!!
……環くん?」
「……オーマイガー」
「??なんで、ナギくんの真似?」
大興奮の壮五。魂が抜けた様になってしまった環。
瞳を閉じて、一度全てを遮断する。
そして、想い馳せる。
もしかすると、俺は…もう一度 会えるのだろうか。
切れてしまったと諦めかけていた、エリと俺を繋いだ運命の糸。その糸が、赤い色をしているのかどうかは分からないけれど。
その か細い糸の端っこを、たしかに今、この手で掴んだ感覚だった。