第74章 高校生の時の、俺の彼女
「人が他人に持つ印象なんて、それぞれなんだから。正解なんてないだろう?
中崎さんは、可愛くて格好良い。それでいいじゃないか」
「…ま、頭良くて何でも出来るとことかは、たしかにカッコいいけど…」
「…確かにお顔立ちは中性的で、可愛いと感じた事もあったけど…」
「はい、解決!
TRIGGERのプロデューサーさんは、可愛くて格好良くて、仕事が出来て頼り甲斐があって、さらに頭も良くて何でも出来る。これでいい?」
どうして俺が、会ったこともない人間をここまで誉め殺さなくてはいけないのか…。
まぁ、目の前の2人が無事 落ち着いてくれたので、これくらいは安いものだろう。
それにしても、こうまで彼らを虜にしてしまう中崎とは、一体どんな男なのだろう。俄然、興味が湧いた。
「んじゃ俺は、時間来るまで音楽聴いてっから」
「食べ終わってから聴いたら?お行儀が悪いよ?」
「もーすぐ食べ終わるって。
んな事より、早く曲を聴いて、俺は冷気を養わなくちゃいけねぇの」
「養うのは英気。せっかく春が来たのに、それじゃまた冬に戻っちゃいそうだよ!」
きっと、覚えたての言葉なのだろう。わざわざ難しい言い回しをしたがる環が可愛いと思った。
そして、俺にもそういう時期があったなぁ なんて、しみじみしてみる。
携帯から伸びたイヤホンを耳に入れ、環は自分の世界に入ってしまった。
そんな彼の隣で、小さく息を吐く壮五に声を掛ける。
「でも、珍しいね。環くんが他のアーティストの曲を聴くなんて。しかも、英気を養う為だって?一体 誰の曲?」
「環くんが好んで聴くのは、いつも同じ曲ですよ。
万理さんは、Lioを知っていますか?」