第74章 高校生の時の、俺の彼女
「お仕事の邪魔をしてしまって、すみません」
「いや気にしないで。仕事をしてたわけじゃないから」
「そうなん?難しい顔してパソコンになんか打ってたから、仕事のメールしてんのかと思った」
アメリカンドッグに齧り付きながら、環は言う。俺は、苦笑いを浮かべて話題を変える。
「それにしても、おやつに それ2本は、育ち盛りだとしてもちょっと多いんじゃない?お願いだから太らないでね」
「ぜんっぜん問題ない!今日は、中崎さんに会えっから、いっぱい食べて気合い入れなきゃだし!」
「ふふ。環くん、本当に中崎さんが好きだよね」
「好き好き、ちょー好き」
壮五の言葉に、環はニカっと明るく笑った。
中崎…。その名前を聞いて、すぐにピンと来た。
彼らが話しているのは、TRIGGERのプロデューサーを務めている男だろう。
エリと同じ名字だから、鮮烈に記憶に残っていた。
「俺も今日、やっと会えるんだよ。八乙女プロの中崎さんて、どんな人?」
「格好良い方です!」
「めっっちゃ可愛い!」
「……えっと、同一人物…だよね?」
2人の口から飛び出したのは、見事に真反対の印象。俺はどちらの意見に寄り添えば良いのか分からず、2人の顔を交互に見る。
「うへぇ〜…やっぱ そーちゃんは、なんも分かってねぇなぁ」
「君こそ、あんなに格好良い人を捕まえて可愛いだなんて、どう考えても変だよ!」
「ふふん。そーちゃんは、ほんとのあの人を知らねぇの。笑ったら、心臓がぎゅ〜ってなるぐらい可愛いし、笑わなくても、心臓がぎゅ〜ってなるぐらい可愛いんだよ」
「僕は君の心臓が心配だよ!
それに、中崎さんはやっぱり格好良い人だと思う。あのTRIGGERさんの隣に立ってても、全く違和感がないし。それに、頼り甲斐もあって仕事だって凄く出来るし」
「ちょっとちょっと2人とも。ストップ!」
今にも喧嘩が勃発しそうな雰囲気に、俺は堪らず若人達の間に入った。