第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
スタジオの控え室。
楽が、いま気付いたように言う。
「そういえば春人お前、今日は別行動じゃなかったのか?付き人は姉鷺の予定だっただろ」
『予定は未定です。変更になりました』
そう。私が今日ここにやって来たのは “ 彼 ” に会う為だ。まさかの偶然で、あの2人も今日 ここで撮影の予定が入っているらしい。
私は早速、目的の人物に会いに行く為 すくっと立ち上がる。
『まだメイクと衣装合わせまでは時間がありますので、皆さんはゆっくりしておいて下さい』
「春人くんは、どこか行くの?」
『私は…ちょっと打ち合わせがあるんですよ』
それだけ告げると、私は足早に控え室を飛び出した。
勿論、打ち合わせ というのは嘘だ。本当は、Re:valeの楽屋にいる百へ会いに行く。
昨夜 電話した際、彼が言っていたのだ。
明日 自分達はこのスタジオで撮影がある。もし控え室に来てくれるのならば、ゆっくり話を聞いてあげる と。
たしか彼らの控え室は…。こことは全く違う階だ。
私はエレベーターが来るのを待って、中に乗り込む。
この建物には多種多様なセットが用意されていて、かなりのパターンのシチュエーションの撮影が可能だ。
なので自ずと、撮影はこの施設で行われる頻度が高い。それはTRIGGERにとってもそうだし。Re:valeにとっても同じ事が言える。
だから、たまたま同じ日に撮影があったとしても なんら不思議は無い。むしろ今回に至っては、撮影場所が被った偶然は幸運以外のなにものでもない。
ようやく目的の部屋の前に到着する。控え室前に貼られた名前を確認して ノックを…
「ふぅん。Re:valeも今日ここで撮影なんだ」
『!?』
平然と隣に立って、Re:vale と表示された貼り紙を見つめている天。私はあまりにも驚いて、びょんっと横に一歩飛び跳ねてしまったではないか。
『く、く 九条さん?何故ここに』
「キミが挙動不審だったから。つけた」
そんな全く悪びれる様子もなく言われてしまったら、返す言葉もない。