第73章 《閑話》とある社長の気まぐれ
「ぎゃー!エリちゃんになってる!!久しぶりに見れて嬉しい!もう超絶 可愛い可愛」
「うるさい!」
『あの…本当に、この姿で社長のお側にいても良いのでしょうか』
「構わんと言ったはずだ」
社長は短く答えると、足早に歩き出してしまう。その背中を私と百も追い掛ける。
「いいなぁーオレもエリちゃんに “ お側にいても良いですか? ” とか言われた〜いっ!」
『あはは。じゃあ百も社長になってよ』
「お!いいですな、いずれはユキと何か会社立ち上げてみるのも。
ねぇねぇ、ちょっと試しに呼んでみてよ」
『社長』
「最高!もう1回!今度はちょっとエロく!」
『……社長』
「イイ!良すぎ!決めた!オレ、絶対いつか社長に」
「やかましいと言っているだろう!!」
ついに社長の雷が落ちてしまった。彼はこめかみを押さえながら、まるで子供の引率をしている気分だ。と吐き捨てる。
「あはは!ごめんってパパさん!ほら、機嫌直して隣のレストランでご飯食べようよ」
「お前は帰れ。私達は、他を予約してある」
『え』
「えー、オレだけ仲間外れ?」
「元々呼んでいないからな」
『いや、そんな…わざわざ他を予約して下さっているんですか?私なら、そこのレストランの軽食などで大丈夫ですが…』
「なんだ。姉鷺から、お前は肉が好きだと聞いたから予約したんだがな。鉄板焼きは嫌いか」
「………」
(おやおや…?なるほど、そういう事か〜)
『いえ、とても好きですけど、でも』
私がかぶりを振った ちょうどそのタイミングで、社長の携帯電話が鳴る。
彼は、ポケットからそれを取り出し画面を眺めた。そして、ぱっと顔を上げ百に言う。
「百!私がここへ戻る前に、お前は帰っていろ。分かったな!」
そして社長は、通話を開始して この場を去った。