第73章 《閑話》とある社長の気まぐれ
「やっほー!春人ちゃん!八乙女パパも、やっほーやっほー!」
「っぐ…、百!何故お前がここに…っ!」
「あれれー?パパ、やっほーは?」
「言うわけがないだろう!!」
現れたのは、百…。いや、百様だった。救世主だった。メシア様だった!
『…っ、百!』
「春人ちゃん…!」
私は、まるで百に吸い寄せられるようにフラフラと歩き出す。きっと、涙目になっているに違いない。
そんな私に、百も調子を合わせる。
『 百 ……っ』
「春人ちゃん…」
私が目の前まで辿り着くと、百は ふわぁと両腕を広げた。心の底から待ち望んでいた、第三者の来訪。その胸に飛び込む事に、躊躇はなかった。
百もまた 私の名前を呼びながら、体をひしっと抱き締めた。
「えぇい やめろ!!馬鹿げた寸劇を今すぐにやめろ!
私はそのノリが大嫌いなんだ!!」
そんな怒声で我に返る。
社長との気不味い2人きりから解放された喜びで、少々取り乱してしまったようだ。
『私とした事が、すみません。つい我を忘れてしまいました』
「あはは。あんな歓迎なら全然いつでもウェルカムだよ?」
「私は歓迎などしないからな。
百、もう一度聞く。何故ここにいるんだ」
百は、相変わらず人懐こい にっこにこの笑顔で質問に答える。
「やだなぁ。ゴルフ場にいるんだから、ゴルフしに来たに決まってるじゃん!
久しぶりのオフに、馴染みの友達と早朝ゴルフ!いま流行りの朝活だね」
言って、百は後ろにいた数人の友達に手を振った。彼らもまた、こちらに向かってひらひら手を振り返すのだった。