第73章 《閑話》とある社長の気まぐれ
『姉鷺さんも、早く彼らを送ってくれれば良いものを…。なに一緒になって待ち伏せしてくれてるんですか』
「だってアタシも気になったんだもの。仕方ないでしょ」
姉鷺は全く悪びれる様子なく、肩に乗った髪を後ろへ はらった。
「ごめんね。ボクは、プロデューサーの事となればどんな事でも知りたいと思ってしまうんだ」キラキラ
『ファンサ全開のキラキラスマイルで言っても駄目ですよ』賭けてたし
全員、明日も早いというのに 一体なにをしているのだ。
「でもまぁ、これでスッキリ帰れるわね。ほーらあんた達。早く車に乗んなさい」
私の用事はもう済んだのだから、送迎を私に任せる事も出来るというのに。姉鷺は自らその役目を買って出た。こういうさり気ない優しさを見せる時は、妙に先輩っぽくて調子が狂ってしまう。
「だな。いい加減 帰るか。じゃあな春人。
経理との癒着がバレた訳じゃなくて良かったな」
「ちょっと何よ その話!聞き捨てならないんだけど!?」
『はい。私が密かに貯蔵している “ TRIGGERの薄い本 ” を夜な夜な楽しんでいる事がバレた訳でもなくて。ほっとしました』
「「「薄い本??」」」
「あんた達は知らなくてもいい本の事よ!!」
姉鷺の決死の叫びが駐車場にこだまする。
そして。いつまでも動かない彼らの背中をぐいぐいと押して、強引に車へと向かわせるのだった。
私はその背中を見送ってから、愛車に跨った。