第72章 綺麗じゃない愛だって構わない
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パチ、パチっと時折 暖炉の火が爆ぜる音。窓の外は、相変わらずの猛吹雪。
まるで、世界から2人だけ切り離されたみたい。この遮断された世界で、私達はこれから愛し合うのだろう。
そっと、両方の手の平で龍之介の顔を包み込む。
『…臆病で、優しいドラゴンさん。
私の心も身体も、早く 全部…食べて欲しい』
見開かれた彼の瞳が、炎でも宿っているかと見紛うほど美しく揺れた。
もっと見つめていたかったが、瞼が下される。すると、彼の整った顔が近付いてきた。
私は、落とされる唇を自分の方から迎えに行く。
すぐに口の中が龍之介でいっぱいになる。いつになく強引な口付け。幾度となく角度を変え、舌が捻じ込まれた。
彼の味がする唾液をこくんと飲み下すと、まるで媚薬でも煽ったみたいに頭がクラクラした。そんな私を、龍之介はじっと凝視する。
『はぁ…は…、??』
「は…っ…可愛い…」
額の前髪を丁寧にはらわれて、龍之介は自分の額をくっつけた。そして目を瞑り、絞り出すみたいに言う。
「エリが、可愛過ぎて…。なんだかもう…俺の中で色々と爆発しそうなんだ」
『…私達が今からする “ 行為 ” は、そういう爆発しそうな気持ちを、想いを互いにぶつけ合うものだよ。だから龍…貴方の中にある その熱を全部、私にぶつけて』
その言葉を聞いてから、龍之介は ぎゅっと私の体を強く抱き締めた。
長身で、骨格の良い彼に抱かれれば。いかに、自分が小さくて弱い存在なのだと思い知る。
それと同時に、女としての喜びが胸に溢れていくのだった。