第72章 綺麗じゃない愛だって構わない
「ん……」
『あ、ひゅう、ひがついら?』
(あ、龍。気が付いた?)
「……エリ?あれ…俺、あの後どうし…
っていうか!!何やってるの!?」
裸同然の女が、自分の指をしゃぶっているのを見て龍之介は目を剥いた。
『何って…見て分からない?凍傷寸前だった指を、口の中で温めてたんだけど』カイロの数が足りなくてね
「普通 分からないよ!!って!あれ、俺、服…っ、エリ、服はっ」
『うぅ、お願い動かないで。毛布の中に冷気が入って寒い』
「えっ!?あ、あぁ、ごめん…?」
龍之介はパニックに陥りながらも、再び身を小さくした。そんな彼を再び抱き締める。彼は真っ赤な顔をして、私の胸の中で ぎゅっと目を瞑った。
『いや…違う、謝らなくちゃいけないのは私の方なの。
ごめんなさい。龍が今こんな目に遭ってるのは、私のせい』
私は彼に、事の仔細を隠す事なく打ち明けた。すると龍之介は、私の腕の中で小さく笑う。
「はは、そうなんだ。俺、エリのドッキリに引っかかっちゃったんだね」
『……笑い事じゃないと思うけど…。ごめん、これからは自重します』
「うん、でもね…そう悪い事ばかりじゃないっていうか…。そのドッキリのおかげで、いま…俺、かなりラッキーな状況っていうか…」
『ラッキーって…。
さっきまで、死にかけてたのに?』
「今だって、死にそうなくらい幸せだよ…」
暖炉の火のおかげで、もう裸で抱き合わなくても命の危険はない。しかし、龍之介は私を愛おしそうに抱き寄せた。
すると、私の太腿に、何か硬い物が当たる…。
『えっと…、何て言ったらいいのか…
その…当たって、マス…』
「っ、ご、ごめん!」
『あぁ、その反応…わざとじゃなかったんだ』
「わざとそんな事するわけないだろう!?」
『いや、いるんだよー?わざと当ててくるような、お茶目な男も』
きっと大和は、今頃クシャミでもしているに違いない。