第71章 ピュイっ!
「一度は、一緒にここへ帰って来たんです。でも俺が、今日撮った写真のデータが入ったSDなくした事に気が付いて…」
「は?SDカードを持ったまま、外で遊んでたんですか」
「ひっ、い、いや、大切な物だから肌身離さず持っておこうって、ポケットに入れてたんす!」ごめんなさいっ
とんでもなく鋭い眼光を飛ばしてくる天。そのあまりの迫力に、思わずチビってしまいそうになった。
俺にこんな作り話をさせる春人を、密かに恨んだ。
「なるほどな。春人の奴は、雪遊びの時に あんたが失くしたっていう、そのSDを探しに行ったのか」
「は、はい…」
「っ!じゃあ春人くんは この吹雪の中、外に!?」
いやぁー…色々と無理のある設定だとは思ったが、案外上手くいくもんだ。
俺は、春人が思い描いた展開通りに事を運べたと 安堵した。このまま最後の仕上げに取り掛かる。
「あぁー!こうなったのも、全部 俺のせいだ!
こんな吹雪ですもん!きっと春人さんは、迷子になって遭難して…もしかすると凍死してしまうかも!
どうしよう〜〜!」
床に突っ伏して、チラリと視線を上げて彼らの様子を伺う。
「……よし。こうなったら、今から全員で探しに行こうぜ」
「楽、待って。こんな天候の中 考え無しに外へ出たら、二次被害に陥り兼ねない。よく考えて行動すべきだ」
どう、だろうか。このくらいで良いのではないだろうか。
俺がそう考えた時、ちょうど春人が目の前に現れた。
“ ドッキリ大成功 ” と書かれた、いつもの立札を持って。
『テッテレ〜。はい、ドッキリでした』
「「………」」
「…えっと、俺は、被害者なんで。クレームは発案者の春人さんにお願いしますね」
殺伐としたオーラを放つメンバーに、俺は前もって言い訳を並べた。
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