第71章 ピュイっ!
私は最後に、龍之介の様子を伺いに行く。
乗馬には自信がないような事を言っていたが、彼も天や楽と同様に問題なく乗りこなしていた。
黒の衣装で、黒い馬に跨る龍之介。真剣な瞳で、ピンと背筋を伸ばす凛とした姿は、単純に美しかった。
「あ、春人くん!
天と楽 見た?凄いよね、まるで本物の王子様みたい」
『さっき見て来ましたよ。たしかに王子様のイメージですね。銀髪がそうイメージさせるのでしょうか』
「なるほど…そうなのかも。2人とも、かっこいいなぁ。俺は、王子様って柄じゃないからさ」
『そうかもしれませんね』
私が言うと、龍之介はちょっとだけ悲しそうに瞳を細めた。
『龍は、王子様というより…騎士様って感じでしょうか。
格好良いですよ。べつに、王子じゃなくても』
「春人くん…
そうか、騎士か…。うん、君にそう言ってもらえると嬉しい。
それに俺も、王子よりも騎士の方がいいかもと思えるよ。なんだか、凄く強そうだろう?
出来る事なら、誰にも 何にも負けないくらい強い騎士になって…この手で、色んなものを守りたい」
真っ直ぐに遠くを見つめる龍之介の瞳は力強くて。さっきも感じた事だが、やっぱり 綺麗だと思った。
一体、彼にこんな表情をさせるものは何なのだろうか。そんなにも、何を守りたいと言うのだろう。
私にその答えは分からないが、彼に守ってもらえる その何かは、間違いなく幸せだ。それだけは、私にも分かる…。