第70章 自分の気持ちを言葉にするの苦手なんだもん
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家政婦の電話を受け、急ぎ帰宅する大和母と出くわしてしまうトラブルはあったが。それでも私と大和は、昨夜と同じ居酒屋に辿り着いたのだった。
到着した時刻が、18時くらいだろうか。結局、3時間弱の時間を彼と共有した。
大和と現地で別れた私は、タクシーで ある場所へと赴いた。その場所は、我が職場。八乙女プロ。
おそらく この時間なら、ギリギリ3人は帰宅していないはず。
そう考えた私は、ロビーにて彼らを待った。
ほどなくして、案の定TRIGGERメンバーは揃って姿を現した。
「え…プロデューサー?」
「春人くん!どうしてここに?」
「仕事休んだ奴が、こんな時間にこんなところで何してんだよ」
私は、驚く彼らに歩み寄る。そして、1番前を歩いていた天の身体を抱き締めた。
「「「!?」」」
目を大きくして驚く彼の耳元で、声を絞り出す。
『天。夜見九郎役、おめでとうございます』
「え…あ、ありが とう」
『どんな内容の仕事も徹底的に仕上げる貴方が、クレセントウルフでどんな姿を見せてくれるのか。今から楽しみです』
「うん」
明らかに動揺していた天だったが、ようやく私の背中に腕を回した。
そんな抱擁もそこそこに、私は龍之介の方へ向う。
そして、同じように彼の身体を抱き締めた。
『龍。牙山十兵衛役、おめでとうございます』
「うん、ありがとう」
『貴方は体も大きくて華があって舞台映えがするから、きっと沢山の人を魅了するのでしょうね』
「そうだといいな。俺、精一杯頑張るから」
龍之介は決意を新たに、私の身体を力強く抱き締め返した。