第70章 自分の気持ちを言葉にするの苦手なんだもん
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くるりと私の体を半回転させ、自分の方に向ける大和。左手を腰に添えてから、顎先に指をかけた。
すると間も無く、彼の顔がこちらに近付いてくる。
何も考えなくても、自然と瞼が下りた。軽く顔を上向けにされると、すぐに唇が落とされる。
がっつくようなキスではなく、優しく、でも艶かしいキス。
私の下唇を、大和の唇が優しく食む。しっとりと、数回ふわふわと食まれた後、濡れた舌先が唇の輪郭をなぞった。
ゾクゾクと、甘い快感が背中を走る。
『っや…ぁ、こんなキス…頭が、痺れる…』
「あぁ、いいな、それ。
そんで痺れたまんま、何も考えられなくなってよ」
僅かに口角を上げた大和。眼鏡のブリッジを押し上げて、今度は音を立てて唇を吸う。
堪らなくなった私は、自ら大和の口中に舌を差し入れた。
遠慮がちに差し入れられた舌に、彼はすぐ自分の舌を絡める。
「ん……」
『っは……ぁ』
先程までの控えめな口付けとは打って変わって、互いの舌使いはすぐに激しさを増した。
互いの舌が、互いの口中を行ったり来たり。深く深く、唾液と舌を絡めていく。
大和は、私の体を両腕でしっかりと抱き締めて。
私は、大和の髪に指を差し入れて きゅっと掴んだ。
酸素が恋しくなるまで、ただひたすらに相手を求める。
やがて、長い長いキスが終わる頃には、私達の息はすっかり上がっていた。
「は…っ、…はぁ」
『っ、大和…』
彼の顔に手を伸ばし、眼鏡を取り去る。これは、キスを交わすには邪魔だから。テーブルの上に眼鏡を置いたら、またすぐに大和は私を捕まえる。
そして、先ほどの続きと言わんばかりに、熱い口付けを交わすのであった。
ようやく唇が離れると、私は 大和を椅子へと誘った。
『座って、大和』
「??」