第70章 自分の気持ちを言葉にするの苦手なんだもん
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虚を突かれ、しどろもどろの大和に 私は背を向ける。そして、部屋の入り口に目を向けた。しっかりと閉じられている事を確認し、安堵した。
「なに。誰か来るかもって気にしてるわけ?」
『わ!』
大和は、後ろからすっぽりと私を抱きすくめた。この、人を食ったような口調。どうやら、完全にいつもの大和だ。
「大丈夫だって。息子が女の子連れ込んだ部屋に踏み入ってくるような、不届きな輩はこの家にはいねぇよ」
『どっちが不届き、んっ…』
大和は上背を屈め、首横に唇を当てがった。そのまま、うなじへ移動する。髪を上げているので、うなじが露わになっているのだ。そこに彼の唇が滑ってゆく。
後れ毛に、ふっと熱い息がかけられれば、思わず色を孕んだ声が漏れる。
大和は、変わらず後ろから私を抱き締めた状態で、衿合わせの部分から ゆっくりと手を差し入れる。
『駄目…大和、着物が…着崩れちゃうから』
「えー…ここまで来てお預けはないでしょ。それに、触らせてくれるって話じゃなかったか?」
『いや、さすがに実家じゃ…不味いって!』
大和は一際、腕に力を込めた。
すると私のお尻の上辺りに、何か硬いモノが当たる…
『あの…や、大和さん?何かが、当たってるんですけど…?』
「当ててるんですけど?」
『う、大和のエッチ!』
「あれ?知らなかった?」
言うと、ちゅっと耳に口付ける。艶かしいリップ音と、唇の柔らかい感触。私は、そこにカッと熱が集まるのを感じた。
「かつての自分の部屋に、あんたがいるんだぜ?
こんなの、興奮すんなって方が無理な話でしょ。悪いけど、付き合ってよ。
俺の可愛い、セフレさん?」