第70章 自分の気持ちを言葉にするの苦手なんだもん
『大和は、誰にも口外してないよね?』
「そんくらいわきまえてるよ。メンバーにすら言ってねぇって」
『ふーん…信じてもいいのかな?大和は私に何回も何回も、平気で嘘ついてくれるからなぁ』
「えーっと…エリさん?ほんとに怒っては…ないんですよね?」
大和は恐る恐る、こちらの顔色を伺った。そんな彼に、私はにっこりと微笑み返す。
『本当に、怒ってない。
むしろ、ここに連れて来てくれた大和には感謝してるくらい』
「…なら、まぁいいか。
あと、どうしても言い訳臭くなるから あんまこういうこと言わない方が良いのかもしれないけど。
俺があんたに嘘を吐く時ってのは、いつだって…エリが欲しいからだってこと、分かって欲しい」
『……大和』
「………ふふ…」
『照れちゃってるじゃん!珍しく素直に好意を口に出したから!自分で笑っちゃうぐらい照れちゃってるよ!』
大和は、ほんの少し赤く染まった顔を両手で覆い隠した。
「いや恥ずかしいだろ…今のは恥ずかしいって」
自分でも、どうしてそんな事を言ってしまったのか分からないという様子で。それでも大和は、おずおずと顔から手をどけた。
私は、そのタイミングを見計らって大和の唇に軽く口付ける。
「……は?」
大和からすれば、視界が開けた途端にキスをされたのだ。面食らって当然だろう。瞳が大きく見開かれ、私を捉えた。
「な、なんの不意打ち…、ちょ。お前さん、どういうつもり」
『はは。どういうつもりなんだろうね。多分、大和の照れた顔がもっと見たくなったのかも』