第70章 自分の気持ちを言葉にするの苦手なんだもん
彼の言葉は、厳しくもあり優しかった。
私はゆっくりと、下げていた頭を持ち上げる。
『……今回の役を 彼らが3人揃って勝ち取った時、私…一緒に喜べませんでした。心から、喜んであげる事が出来なかったんです。
私はそれを…罰だと感じました。
彼らに対し秘密裏に、コネクションを使おうとした私への…罰なのだと』
出来ることなら私も共に、喜びを分かち合いたかった。
でも…
『私は、これで 良いんだと思いました。
確かに…3人を信じて、綺麗な道を歩き続ける事も可能です。
ですが私は、もし次も同じような機会があれば、きっと飛び付きます。それがどんなに汚い取引や契約であっても、私は応じます。
その時も、TRIGGERに事実を伝えることはしないでしょう。
たとえ、そのせいで彼らと同じ景色を臨めないとしても。
それが、私の仕事だと思うから。
それが、私の…覚悟なんです』
そのせいで、今後3人と同じ喜びを共有出来なくても。対等でいられなくなっても。欺き続ける結果となっても。
それくらいの覚悟なら、もうとっくに出来ている。
TRIGGERを、最強にのし上げると決めた日から。
『せっかく戴いた御指南だったのですが…、こんな答えしか返せない私を、どうか 許して下さい』
「謝る事は、何もないよ。貴女の振る舞いと言葉からは、しっかりと覚悟が伝わった。TRIGGERへの愛情も。
それが君の選んだ道なら、迷わずに進みなさい。
僕も、出来る限り力になろう。勿論、真っ当な方の手助けでね」