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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第9章 抱いて差し上げましょうか?




1人の受付嬢は、すぐさま内線を繋いだ。

私は 他の受付嬢と適当に雑談をしながらも、その内線の会話内容に聞き耳を立てる。


「はい…えぇ、ですが…お写真も実際にお持ちになっていて…」


すると、彼女が急に小声になった。私に聞かれたく無い内容らしい。


「金髪で…、はい。スーツではないです。えっと…そうですね、なんだか軽い感じの」


私は耳が良いのだ。なんとかその声を拾えた。


「分かりました。すぐにご案内しますね」


心の中でガッツポーズした。
受話器を置いた彼女は、私に向き直って言う。


「大変お待たせ致しました。担当の者が今すぐお会いしたいとの事ですので、ご案内致します」


深々と頭を下げた彼女の後ろをついて行く。

よし。とりあえずあの記事を書いた記者に会えるところまでは漕ぎ着けた。後は出来るだけ粘って、捏造を認めさせるところまで持って行く…!


いかにも出版社らしい社内。いたる所がタバコ臭い。適当に置かれた鮮やかな緑の観葉植物。グレーの落ち着いた絨毯が敷かれた廊下。

やがて、その部屋に辿り着いた。磨りガラスのドアを受付嬢が開けると、既に1人の男が中で待機していた。

私をここへ送ってくれた彼女は、ぺこりと一礼して持ち場へ戻って行った。


「いやぁ、どーもどーも。わざわざ写真を持ち込んで頂いたそうで!」


背の低い、小太りのそいつは、私に向かって愛想良く握手を求めて来た。
私は その手を取る。


『…どうも。とても、お会いしたかったですよ』


不必要な程に、手をギュッと強く握られた狸のようなその男は、私から放たれる異様な怒気に気が付いたようだ。


「あ、あんたは一体…」

『はじめまして。私は、こういう者です』


名刺を手渡す。それを受け取りすぐに確認した男は、焦る様子も慌てる様子も見せず、にやりと笑った。


「…なるほど。こりゃ一本取られましたね」

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