第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
万全に万全を期しておいて、無駄になる事などない。結局、私は手土産の候補をカステラに絞った。
『家の近所に、老舗のカステラ屋さんがあるんです』
「カステラか。ザラメ付いたやつ美味いよな」
『そうなんですよねぇ。あのザクザクとした食感がとても素晴ら……
運悪く、ザラメのせいで歯がかけちゃったりしないですよね』
「うーん。とりあえず、今までの俺の人生でそんな話は聞いた事ないかな。
っていうか、運悪過ぎだろ俺の親」
私もない。
では、手土産はカステラに決定だ。
「ぶっちゃけ手土産よりも、もっと重要な事があるだろ」
『え…、それって何ですか?』
「ずばり、服装だ」
『あぁ、それならスーツがあるので問題ないですよ』
「それがな…問題大有りなんだよ」
大和は、テーブルに両肘を突いて指を組んだ。それから、やけに深刻そうな顔を こちらに向ける。
「うちは…和装の人間しか敷居をまたぐ事が出来ねぇんだわ」
『えっ!?ま、まさか、そんな仕来りが…!
でも確かに言われてみれば、千葉さんもいつも和装のイメージですね』
「だろ?」
『ということは、明日は大和も着物か何かで?』
「あー、まぁ…その予定かな」
『分かりました。では私も、明日はとりあえず着物で伺いたいと思います』
「よぉしっ!!」
『やっぱりガッツポーズしてますよね』
「幻覚だろ。お前さん、もう酔ってんのか?」