第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
脳内は、もう明日の段取りに向かって走り出していた。
最近めっきり着る機会のなくなった女性物のスーツは、タンスの奥に仕舞いっぱなしだ。防虫剤臭くなってやしないだろうか。今日、帰ったらすぐに出そう。
それに、手土産だ。天下の千葉に会うのに、変な土産は持っていけない。用意する時間がないのは確かだが、その中でも厳選したものを用意しなければ。
もしも経費が出るなら、越後屋のお菓子でも用意したいところ。勿論、食べられない方のお菓子だ。
『防虫剤の手土産の黄金色のお菓子…』ぶつぶつ
「何言ってんの全く理解出来ねぇけど、あんたが舞い上がってんのだけは分かる」
『あんな大御所に会えると、想像するだけでドキドキしますよ』
「んないいもんじゃねぇぞ…」
『ところで、手土産は何がいいですかね。定番は、やはりお菓子でしょうか?甘い物は食べられます?』
「手土産とかいらないから」
『そういう訳には。モナカとかどうですか』
「あー、いいんじゃないでしょうか」
『はっ!でももし、モナカのパリパリの部分が運悪く喉に張り付いて、窒息死してしまったらどうしましょう!』
「あのさ、流石に舞い上がり過ぎだろ。お兄さん今ちょっと引いてる」
『危ないところでした。手土産は羊羹にします』
「もう好きにしてくれ」
『はっ!でももし、羊羹を食べている際、運悪く 楊枝が爪と肉の間に刺さってしまったらどうしましょう!』
「やめろ!想像しちまっただろ!」痛い!