第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
「とは言っても、本邸の方には連れてってやれねぇけどな」
『…二階堂さん』
「ああもー、んな目で見るなって。本妻の子供でもない俺が、本邸に入り辛い事なんか予想つくだろ。
それに、こっちは本邸に足を踏み入れたいなんて これっぽっちも思ってないから」
本邸には、本妻である朝宮巴夫人がいらっしゃるのだろう。彼女から見れば、大和という存在が受け入れがたいのは容易に想像が出来る。出来るのだが…
それを、淡々と表情も変えずに話す大和を見ていると…。なんというか、胸がチクリと針で刺されたように痛むのだ。
こんな なんて事ない顔で複雑な家庭環境の話が出来るところへ来るまでに、彼は一体どのくらいの痛みを飲み込んで来たのだろう。
「ってなわけで、別邸だったら俺が連れてってやるよ。ちょうど取りに帰らなきゃいけねぇ荷物があってさ。
明日でいいか?」
『明日!?』
「明日なら、親父もいるらしい」
なるほど。いくら引退なさったとはいえ、まだお忙しいに違いない。明日を逃せば、いつこんなチャンスが巡って来るともしれないわけだ。
『わ、分かりました。明日、時間を作ります』
「あと、男装はなしで」
『何故!?』
「………ほら。俺の親父様は、無類の女好きだから。急に男が訪ねて来たらブチキレるかもしれないだろ」
『私の中の千葉様のイメージ壊さないでもらえます!?』実はファンだよ!?
「条件飲めないなら、俺は構わないんだぜ?べつに1人で帰ってもいいし」
『ぐ…っ。わ、分かりました。では、明日は女の格好で行きます』
「よし!!」
『今めちゃくちゃガッツポーズしませんでした?』
「気のせいだろ。お前さん、もう酔ってんのか?」