第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
『ありがとうございます。
それにしても二階堂さんって…意外と、律儀な人だったんですね』
彼を、チロリと見上げて言う。
私達があの契約を交わしたのは、約1年も前だ。
私が体を差し出し、その対価に大和は 千葉志津雄とのコネクションを提供する。
が、当時 彼は父親と不仲であり対価を支払う事が出来なかった。憤る私に、大和は言ったのだ。
“ 今すぐには無理でも、近い将来 絶対に約束は守る ”
いわゆる、出世払いというやつだ。それを彼は、有言実行してみせた。
「なんだよ、いま知ったのか?何を隠そう俺ってば、律儀で約束を守る男なの。
ちなみに…恋人との記念日なんかもちゃーんと覚えてて、毎年 花束とか買って律儀にお祝いするタイプのマメな男なんだけど…
どう?」
『どうって…胡散臭過ぎて目眩がしてます』
「体調不良起こすレベル!?」
『私は、自分の事を律儀だと宣言する 律儀な人に出会った事がありません』
「同感」
店員が、注文したエノキポン酢を持ってくる。エノキの上に乗っかった紅葉おろしの赤とネギの緑が綺麗だ。
いやいや、今はプロが作るエノキポン酢に見惚れている場合ではない。
出来れば大和から、誰に、どんな言葉を用いてTRIGGERに役を回したのか訊き出したい。おそらく父親である千葉氏は一枚噛んでいるとみて間違いはないはず。
が…こういったコネクションや人間関係は非常にデリケートな問題だ。根掘り葉掘り聞くのは無粋だろうか。
ならばせめて…
『出来れば千葉さんにだけでも、会っておきたいな…』
「え?」
『あ、いえ。分かってます。会いたいからと言って、私などが ぱっと会えるようなお方ではないことは』
「べつに会えるだろ」
『……会えるん、ですか』
「会える会える。
俺と一緒なら、な?」