第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね
その光景に目を細める。そんな私に、加藤は言う。
「良かったな」
『えぇ。一織さんにとって、あの方達と繋がることは絶対に有意義ですから』
「俺が良かったって言ったのは、あんたにだよ」
『え?』
「思惑通りなんだろ。お前の」
勝ち誇った顔を向けてくる加藤に、私は首をすくめてみせる。
『…さぁ。何のことだか』
「しらばっくれんなよ。
あいつを監督に推したのは、お前だ。それから、その時に わざとらしく声を張り上げて周りに聞こえるように言った。あいつがさも、優秀な人間であるかのように、大袈裟に期待を煽るような事を。
それでチームが勝てば、監督の采配が刺さったと周りは一織に注目する。それが狙いだったんだろ?
全部あんたの計算だ。IDOLiSH7と、あそこにいる重鎮どもを繋げてやる為のな」
『…カトちゃん』
「あんだよ」
『駄目ですよ。貴方みたいなキャラが、そのように細かい分析をしては。
もっと馬鹿みたいに振る舞って、ガサツで、ガハガハ笑っていてもらわないと』
「ガハガハ。よし、馬鹿みたいな力でガサツにお前を殴ってやる」
満身創痍の私を、この男なら本当に殴りかねない。危険を察知した私は彼から距離を取った。
「ま、何にせよ…無事に解決して良かったな」
『…そうですね』
「あの不良馬鹿どもも、自分の非を認めて謝罪出来る程度にはまともだったわけだ…」
『はぁ、まぁ。そうですね』
「なら、あんたも自分の非を認めて謝らないとな」
『私が何の非を認めて、誰に謝罪しろと言うのです』
「神聖な試合でクソ暴れ回った非に決まってんだろ!全世界のプレイヤーと、全世界のサッカーをこよなく愛す人間に謝りやがれ!」
『………ごめんなさい』