第9章 抱いて差し上げましょうか?
私は、明日の準備をする為 ある物を持って姉鷺の姿を探す。
どうやら社長室にいるらしい。私は急ぎ足でその場所へと向かう。
『失礼します』
「あら、どうしたの?こんなところで油売ってて良いわけ?」
社長は何も言わなかったが、ギョロリと私を睨みつけた。早くなんとかして状況を好転させろとでも言いたげである。
無論、私とてそのつもりで行動しているのだ。
『今回の事、早く片をつける為には、お2人の協力が必要です』
「……いいわ。私に出来る事なら」
八乙女宗助も、しぶしぶだが頷いた。
それを確認してから、私は今装着しているウィッグを取り去り 新たなウィッグを被る。それは、パーマがかったグレーヘアのウィッグだ。
「あら、楽の髪型と同じウィッグね…」
その通り。これは彼の髪型を模して作られた物だから。なぜこんなものが資料室にあったのかは知らない。
『はい。社長は これを』
「??」
突然、私にカメラを渡された社長は首をひねっている。
『姉鷺さん、こちらへ』
私は彼をちょいちょいと呼び寄せる。目の前に来ると、姉鷺の腰に手を回す。
「「なっ!?!?」」
意味がまるで分かっていない2人を置いて、私は思い切り背伸びをする。
これで遠くから見れば 、楽と女性が引っ付いているように見えるだろう。
「ちょっと何すんのよぉっ!」
びゅっと飛んで来た姉鷺のビンタを、難無く躱す。躱したまでは良かったのだが。ついつい癖でカウンターが発動してしまった。
私の右拳が、姉鷺の顎を捉えた。
『あ、ごめんなさい』
「いっったぁ!!!信じられない!!アタシの美しい顔を殴ったわね!?」
『つい体が。反射で動いちゃうんですよ。姉鷺さんがビンタしてくるからですよ』
「反射でカウンター繰り出すって!アンタもうほんと何なの!?」
しばらく私達の様子を見守っていた社長が呟く。
「…俺は、何を見せられてるんだ?」