第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね
2人目の退場者が出た。
だが、これくらいで私の怒りは収まらない。
「な、なんで春人くんの相手ばかり倒れていくんだ…!」
「……あ、あのさ春人。あんた、まさか…」
『三月さん。世の中には、わざわざ言葉にしない方が良い現実もあるのですよ』
「怖ぇよ!!」
『それより、私の次の相手はあの男がいいです』
「うぅ、春人ちゃんが…なんか生き生きしてる」
5対3という、前代未聞の試合が始まった。
私と対峙した男は、訝しむような、怯えているみたいな視線をこちらに向けた。
「ま、まさか…あの2人は、あんたが…」
『……』
「た、頼む!もう許してくれ!俺達が悪かった!!もう2度と、意図的にファールなんかしないから!!」
『……そうですか』
「!!ぁ…じゃあ、許してくれるん」
『貴方も、彼らが意図的にファールしていた事実を知っていた上で、それを容認していたという事なんですね』
「ひ、ひぁっ」
男は 私の眼光に耐え切れず、その場から逃げ出そうとした。しかし、それを見逃す私ではない。
私はポケットに忍ばせていた、ペンライトを取り出す。そしてそれを素早く、男へ向かって突き立てた。
突き立てた場所は…男の、男たらしめている部分である。
「カフっ!!」
ばたり。と、男は地に伏した。
周りから見たら、急に股間を押さえて倒れたように見えただろう。ベンチで応援する人間達は全員、その不可思議な光景に首を傾げた。
『……あと、2人…。あと2人…』
「う…うわぁぁああ!やっぱりあいつが!やっぱりあいつが!!」
「もう無理!!助けてくれぇーー!もう嫌だぁ!!」