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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね




護身術を教えてくれた人が、私に言った。
お前には、手技よりも脚を使った挌闘技の方が向いている気がする。と。
自覚はあった。咄嗟のことにも、手より足が先に動く場面も多いのだ。


『………』
(脚は人より器用なはずなんだよな…。なんかこう、上手くこちょこちょやったらカット出来ないかな)


とりあえず、ボールを狙って足を出してみる。しかし、そんな容易に奪えるはずもなく。簡単に躱されてしまう。

相手の男は、真剣な顔をする私を嘲笑った。


「ははっ!何やってんだよ」

『……サッカー』

「テメェがただの下手くそだってのは、とっくにバレてんだよ。何したって無駄無駄。
でもまぁ、俺は優しいからなぁ。下手くそなお前とも遊んでやるよ」


完全に遊ばれている。男は、私の前で無駄に足技を披露した。
…相手が油断しているこのタイミングでボールを奪えなければ、私に勝機はない。

他の4人がいれば、試合には勝てるだろう。
しかし…
私は、負けず嫌いだ。このまま相手に舐められたままで終わるなど、想像しただけで目眩がする。

勝つ為に考えて考え抜いた結果、私は…
ボールを見る事をやめた。

腹立たしいが、私と男のテクニックの差は歴然なのだ。このまま真っ向から勝負していては、勝てるものも勝てない。


「お、なんだ?諦めたのか?いいのかー?また抜いちまうぞ?」


だから私は、ボールの代わりに、周りを見た。
ピッチに立つ、敵、味方の位置を確認する。

私が彼ならば、どこを通ってゴールに向かいたい?誰に向かってパスを出したい?

考えろ。テクニックのない私に出来るのは、観察して相手の動きを予測する事だけだ。

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