第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね
後半戦が始まる。
ボールを持ったのは青チーム。私達は守りに入る。
やがて、私のマークする男にボールが渡った。相変わらず私の相手は、百に意地悪を言った男だ。ぜひここいらで、一矢報いたいところだが…
男は、するりと私の横を通り抜けていく。注意深くボールを見張っていたのだが、結局 簡単にフリーにしてしまった。
「……ちょっとだけ、まずいかも」
百の表情が、俄かに曇った。
彼の不安は、的中する。
このチームの “ 穴 ” を見抜いた相手は、私を中心に攻め立てたのだ。
私がマークする男に、意図的にボールが集められるようになってしまった。懸命なブロックの甲斐もなく、その度に難なく抜かれてしまう。
「春人ちゃん!どんまーい!力抜いて、楽しんでいこう!」
「春人くん、大丈夫!もし点を取られたとしても、また俺達が取り返すから」
百や龍之介は、私が落ち込まないよう声を掛けてくれるが…このままではマズイ。
今のところは、皆んなのフォローや加藤のブロックに助けられ、失点こそしていないが…それも時間の問題だろう。
『…どうすれば、抜かれないか。
考えろ…考えろ』
タイムアウトを申請しようと立ち上がった一織が、視界に入る。首を振って、それを制した。
まずは、私にやれる事をやる。タイムアウトは、それでも駄目だった時に使って欲しいと思ったからだ。
私は、味方からのパスを受けた男の前に立ちはだかって考える。