第9章 抱いて差し上げましょうか?
掲載されている写真は3枚。
1枚は、マンションの前で抱き合う姿。そしてもう1枚は、2人が寄り添いながらマンションのエントランスへと入った写真だ。
最後の1枚は、女性の部屋に2人して入室する写真だった。
そして、記事の見出しはこう。
《人気アイドルTRIGGERの十龍之介!送り狼?!お泊りコースか!》
『…えっと、狼ったり、お泊りは、事実無根という事で いいんですよね?』
「あ、当たり前だよ!たしかに俺は、彼女をベットに寝かせる為に部屋に入って………」
念の為に聞いただけの私に、龍之介は首をぶんぶんと横に振った。
それから不自然に言葉を切って、顔を赤らめて固まってしまう。そんな彼に、楽が助け舟を出す。
「…誘われた?」
すると、少し迷った後で 龍之介はこくんと小さく頷いた。
「でも、もちろん断ったよ。それですぐに部屋を出たから…。俺がマンションにいた時間は、5分とかそれくらいのはずだ」
「なら、この お泊りってワードも出版社の勝手な捏造って事だね」
天の言う通りだ。龍之介から話を聞けば聞くほど、怒りが増していくようだ。
「で?これからどうする」
『勿論、事務所からは釈明声明は出しますよ。社長ともそれは合意しています。
いま十さんに説明頂いた事を、誠心誠意ファンの方にも伝えます』
「でも、それじゃ弱いよね」
彼の言う通りだ。
一度火のついた世間は、それくらいでは落ち着かない。捏造が妄想を呼び、炎上をもたらすだろう。
「………」
龍之介は、いつになく落ち込んで俯いてしまっていた。無理も無い。実際、彼にも付け込まれる甘さがあったのは事実なのだ。
しかし、今後同じ過ちは犯さないだろう。今回の事で学習してくれたはずだ。