第67章 左手は添えるだけ
「あ、そうだ。審判はどうする?そっちは5人しかいないから、うちかの人間の誰かに頼むしかないよね」
「そうですね。審判なしで本気の試合やったら、何かと揉めるでしょうし」
百と三月の会話を聞いて、不良達は首を振った。
「そっちの奴らの審判になんかに従えるかよ。お前らに有利なジャッジ下すに決まってんだろ」
「ええっ、そんな事しないってば!」
『まぁまぁ。百さんも落ち着いて下さいよ。相手が渋るのも仕方ない事だと思います。
でも安心して下さい。私が中立な人間を連れて来ましたから』
私が その人をピッチに連れてやってくると、9人は声を揃えて言った。
誰???と。
『その辺に立っていた人です。
白と緑のシマシマの服を着て、首から笛の付いた紐をぶら下げていて、赤と黄色のカードを手に持っていたのですが。
審判の人じゃなかったのですか?』
「審判!それはもう紛う事なき審判!!」
「し、審判の中の審判だ!」
「審判のテンプレじゃんか!!
通りすがりの審判さん!よろしくお願いします!」
「はい!私は通りすがりの審判です!試合の臭いを嗅ぎ付け、審判をする為に駆け付けました!協力させていただきますので、良い熱い試合をして下さい!」
「「「はい!!」」」
「いや、試合の臭いってなんだよ…」
三月、龍之介、百は、順に驚きと喜びの声を上げた。加藤だけは、訝しげな目を 通りすがりの審判に向けている。
私は、不良達が小さく舌を打ったのを聞き逃さなかった。どうやら彼らは、審判なしでの試合を望んでいたようだ。きっと、その方が彼らにとっては都合が良いのだろう…