第67章 左手は添えるだけ
「あの…そろそろ、問題解決に動いてもいいでしょうか」
「おっ!いいねぇ一織!やっちゃってー!」
「百さん。ここを予約する際は、ネットを利用するのでしょうか?」
「うん。そうだよ」
「でしたら、その履歴は携帯に残りますか?もしくは、予約確定画面のような物が存在していたり」
「あっ、あるある!」
おそらく一織は、小学生チームと不良チームそれぞれに、証拠を提示させようとしているのだろう。
その証拠となるのが、予約をした際の確定画面。
ほらこれ、と言って百が差し出した携帯。そこには、この体育館の公式マークと、今日の日付と予約時間 等々が表示されていた。
それなら ボク達も持ってる!
そう言って少年達も、携帯電話を取り出して一織に手渡した。しっかりと確認した後、彼は頷いて告げる。
「……たしかに、確認しました。彼らは間違いなくここを予約したようですね。
さて。次はあなた方の番ですよ」
誰しもが予想していた展開だろう。おそらく不良達は、証拠を提示出来ない。何故なら、端からここを予約などしていないから。適当なカモを見つけ、場所を脅し取る算段だったのだ。
だが運悪く、正義のアイドル集団が現れてしまった。彼らにとっては予想外だったろう。
とにかく。これできっと解決する。
これがもし…正論が通じる、まともな相手だったならば。
「んなもん、ねーよ」
「はい?」
「ねーもんはねぇって言ってんだよ。
携帯、忘れて来ちまったからさー」
「そうですか。でしたら、証拠のないあなた達は引き下がるべきだ」
「はーー?証拠?
なら、お前らも出してみろよ。俺らがここを予約してねぇっていう証拠とやらをよ」
顔を見た瞬間から分かっていた。こいつらには、正論も理屈も、意味を成さないこと。