第9章 抱いて差し上げましょうか?
1週間後、私はこの一夜のことを後悔する事になる。
もし私が、あの時Longhi'sに出向かなければ。
もしあの夜、私が楽の誘いに素直に応じて 彼らと飲みに行っていれば…
こんな事にはならなかったのに。
————1週間後
「お前がついていながら!これは一体どういう事だ!」
社長に、バシっ!と投げつけられたのは、週刊MONDAY。
落ちて広がったページに写っているのは、TRIGGER 十龍之介の姿。
マンションの前で、女性と抱擁を交わす彼の姿だった。
『…ですから これは、事実無根です』
「事実か事実じゃないかなど、どうでも良い!それを決めるのは この記事を読んだ人間だ!」
それは間違いない。私も大いに同意する。
「とにかく、事態をなんとかして終息させろ!これは社長命令だ!」
私は足元に落ちた雑誌を拾い、分かりました。とだけ答えた。
社長室を出て、廊下を歩く。右手に握った雑誌を、ぐしゃりと握り潰す。そして強く歯をくいしばる。
わざわざ社長命令だと言われなくたって、絶対に私がなんとかしてみせる。絶対に。なんとしても。どんな手段を使ってもだ!
「春人くん」
後ろから龍之介の声が聞こえる。私は小さく深呼吸をしてから振り返る。多分、それなりに今の私は普段よりは感情が表情に現れているだろうから。
もちろんこの怒りは、龍之介に向けているわけではない。
「…ごめん。俺のせいで」
『貴方が悪くない事は分かっています。全ての根源は…。
こんなイカサマのゴシップを書いた、この悪徳記者です』