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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第9章 抱いて差し上げましょうか?




「いかがでした?彼らは」


皺の寄った目元に、より皺を寄せて。マスターは私に椅子を勧めたので、そのままカウンターに着く。


『……ミントジュレップを』


私はマスターの質問に、そのまま答えるのではなく。カクテルを注文した。


「…ふふ、かしこまりました。どうやら、良いライブだったようですね」


はたからみると、会話が成り立っていないように聞こえるだろうが。私とマスターの間には きちんと脈絡があるのだ。

私はいつもカクテルを注文する際は必ず、いわゆる “ 酒言葉 ” にちなんだ物を頼む。

ちなみに私がさきほど頼んだ、ミントジュレップの酒言葉は…


「 “ 明日への希望 ” そんな感想を、貴女が抱いたとは…。これからの彼らには、期待してしまいますね」


嬉しそうに、私の前に出来上がったカクテルを 音も無く置く。


『…正直、度肝を抜かれましたよ。だいたい何故あんな歌を聴かせられる子達のライブに、たった9人なんですか!観客が!』

「さぁ、…盛大に失敗したんじゃないでしょうか。セールスアピールに」


こんな事がたまにあるから、箱の大きさと アイドルの力量は関係無いと思い知らされるのだ。

私は分厚いロックグラスを クルクルと回した。砕かれた氷がシャラシャラと音を立て、ミントの鮮やかな緑が舞っている。


『純朴で、荒削りで…。私にはちょっと眩しすぎましたけど。きっと あの子達は すぐにここまで登ってくるでしょうね』


さきほど使用したシェイカーを洗いながら、マスターは頷いた。

TRIGGERとは毛色が全く違うが、IDOLiSH7がお茶の間に受け入れられやすいキャラクターなのは明白だ。

きっともうすぐに、このアイドル界は賑やかになっていくのであろう。バーカウンターの端っこで、そう予感するのだった。

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