第66章 しちゃうか〜結婚!
「あなたがここにいる、本当の理由を教えて下さい」
『…ふふ、変な事を訊きますね。理由なんて、フットサルとやらを楽しみに来た以外にないでしょう』
「「「嘘だ!!」」」
ピッチに向かって走り出していた3人だったが、揃ってこちらを振り返り 言い切った。
まるで責めるように、全員がもれなく人差し指を私に向けている。
どうやら、私が彼らの活躍のシーンを見逃した事が相当ショックだったらしい。
「…たった数時間で、この良い人3人組から指差しで怒られるなんて。あなた、一体 何をしたんですか」
『彼らには、再教育が必要みたいですね。人を指差してはいけないと、教えられて来なかったのでしょうか』
「はぐらかされてあげませんよ。あなたは、TRIGGERにメリットがないと動いたりしない。ここに来た理由も、何かあるはずだ」
試合が始まりそうだというのに。彼はピッチに目もくれず、私を睨み付けていた。
私が利得でしか動かない人間だと言うのなら、彼だって同じだ。彼も、ここに来れば自得を取れると踏んだから 今ここにいる。
一織の見出したメリットとは、美味しい弁当でも、楽しいスポーツ観戦でもない。
ここに、私がいるからだ。
『…IDOLiSH7の為に、少しでも私を利用しようとする貴方のその貪欲さが、私は好きですよ』
「!!」
彼の、凛とした瞳が揺らいだ。私は目を細め、言葉を続ける。
『だから、ヒントをあげます。
周りをよく、見回してごらんなさい』
言われたら、すぐに彼は辺りに視線をやった。すると、みるみる内に一織は顔色を変える。
「な…なんですか!この顔触れは!」
『よく勉強してますね。ここに集った人間が、いかに異質であるか気付けたのが その証拠です』
私のこの言葉を、皮肉と受け取ったのか。彼は薄く笑った。
そう。ただ権力者の顔や好みをインプットしたところで、アウトプット出来る場に持ち込めなければ、その知識は何の意味も成さないのだ。
『 “ 実録!芸能界で生き抜く為の処世術本 ” の、第一項…。アンテナは、常に張っておくこと』