第66章 しちゃうか〜結婚!
「でもほんと春人は、オレの中で 最初の印象からかなり変わったよ」
『良いふうに変わっていたら嬉しいのですが』
「良い方に変わったに決まってんじゃん!
さっきの婿とか嫁とかじゃねぇけど、あんたみたい奴とずっと一緒にいられたら、楽しいだろうな!」
『え…』
「みっ、三月!!ちょ、大胆発言!」キャー!
「冗談だろ?三月くん、今のは冗談だろう?」
『そんなふうに言われると、悪い気はしませんね。うっかり結婚しちゃいます?』
「ははは!だな!しちゃうか〜結婚!」
『特別に、貴方に婿の座を譲りますよ』
「お、サンキュ!じゃあ嫁の座は春人にやるな」
どんな無茶な斬り込み方をしても、彼からは安定した答えが返ってくる。小気味の良いやり取りが心地良い。
しばらく続いたラリーを、複雑そうな顔で見つめる百と龍之介。
一織は、呆れたように溜息を吐いた。
「まったく…なんて不毛な会話ですか。
兄さんは渡しませんよ」
「お前もノリノリじゃねぇか!!」
『…あら。一織は、私がお義姉さんでは不服なのかしら。悲しいわ』
「あんたもノリノリだな!!」
「気色の悪い喋り方は即刻やめて下さい」
一織は、顔をしかめた。そんな彼の肩に、百が手をポンと乗せる。
「おぉ!春人ちゃんからの貴重な呼び捨て!まぁオレもさっき呼んでもらっちゃったんだけどっ」
「貴重なんですか?呼び方なんて、どうでも良いんですが」
「あはは。良かったね!一織くん」
「…お2人にそう言われると、得した気分になってきました」
なんだかんだ、周りに流される一織だった。パーフェクト高校生の、可愛らしい一面が見られたような気がする。
『残念ですねぇ。私が姉になった暁には “ 色々 ” と、教えて差し上げようと思ったのに』
「色々…とは」
『今なら特別に、私1人に対し “ 実録!芸能界で生き抜く為の処世術本 ” が1冊付いてくる!』
「8人下さい」
『ありがとうございます。ですが現在、在庫が1人となっておりまして』
「販売予測が甘いですよ。事前マーケティングに問題があったのでは?」
『すみません…』
「まぁいいでしょう。
不束者ではない兄ですが、どうかよろしくお願いします」
『お兄さん大好き!の気持ちが漏れ出てしまってますよ』不束者ではないって…