第66章 しちゃうか〜結婚!
腹八分目なんて言葉は何のその。あまりの美味しさに、後のことなど考えず暴食してしまった。
私は少し後ろに体重を預け、何の気なしに呟いた。
『本当に美味しかったです。こんな料理を作れる三月さんと結婚出来る人が羨ましいですね。
私も、思わず婿に来て欲しいと思ってしまいましたよ』
「「えっ!」」
何故か、三月よりも素早く反応する百と龍之介。
名前を出された三月は、何故か私を見て固まった。大きな目を、もっと大きくしている。
「……や、やばい…
ちょっと今の台詞、もう一回くれる?」
『は?えっと…
本当に美味しかったです?』
「違うって!その後のヤツ!」
『婿に来て欲しい?』
「それだよそれ!やばい!まじ嬉しいー!
今までオレの飯食った奴に、嫁に来て欲しいってのは何回も言われた事あるんだけどさ…
今…いま初めて “ 婿 ” に欲しいって言われた!
春人!ありがとなー!!」
これ以上ないというほど、歓喜している三月。一織を飛び越えて、私を ぎゅうっと抱き締めた。
以前にもこうして、彼に抱き締められた事があった。こういうスキンシップをナチュラルにしてしまうのは、きっと彼の性分なのだろう。
「お、俺も料理は得意なんだ!」
『知ってますけど』龍の料理は美味しい
「オレだって!頑張ったら美味しい料理作れちゃうんだから!」たぶん!
「ダウトーーー!」
百の言葉に、三月は激しく突っ込んだ。
「三月ひどい!!そんな全否定する事ないじゃんかあ!」
「いえ。兄さんは何も間違っていません。失礼ながら申し上げますが、百さんは確実に料理には向いていません」
「そうですよ!!百さんは、カレーすらも不味く作れる人材でしょ!」
「それどころか、何故か料理を突然 爆発させるポテンシャルを持っています」
「それは凄いな…そんなの、漫画でしか見た事ないよ…」
「ちょっと!流石にひど過ぎない!?いつか飛び切り美味しい料理を作って、絶対あっと言わせてやるー!」
私は密かに、彼の手料理を振舞われる日が来ませんようにと祈るのであった。