第66章 しちゃうか〜結婚!
全員の視線が、私の手元に注がれる。
ようやく頭を出した、薄橙色のプリン状のもの。いや、というかプリンだ。
三月は申し訳なさそうに、代わりに自分が握ったおにぎりを差し出して言う。
「わ、悪かったな。ほら、それは置いといて、こっち食ってくれ」
『……いえ』
私は、焼鮭用に置いてあった醤油を、プリンにかける。そして、目をつぶって再びおにぎりを齧る。
「春人!?無理すんなって!」
『大丈夫です。プリンに醤油をかければ、ウニになるって聞いた事があります』
「ウニにはならないと思いますが」
「当たり前だろ!ありゃ都市伝説だ!
……実際んとこ、どう?」
『プリンに醤油をかけた味がします』もぐもぐ
「やっぱりなあ!!」
きっと私は、中にガムが入っていようと飴玉が入っていようと、完食したに違いない。
私を想い、環が握ってくれたおにぎりだから。
「春人ちゃんは、優しいねぇ」
「む、無理すんなよ?」
たとえそれが、地獄のように不味くても…
『う……』
「食べなければいいでしょう。どう考えても、おにぎりの具材には不向きなプリンをチョイスした四葉さんに非があるんです。あなたが意地を張る必要性なんて、どこにもない」
『…一織さん。貴方は、何も分かっていない』
「え…?」
『これは、このおにぎりは…四葉さんが最期の力を振り絞って、私に遺してくれたもの!それを全て食す事で、私は彼の意志を受け継いで生きていくんです!』
「うちのメンバーを勝手に殺さないでもらえませんか!」
「そんな妄想で自分を追い込まなきゃ食えないレベルなんじゃねぇか!マジでもういいって春人!」