第66章 しちゃうか〜結婚!
三月の話によると、いつもよりも早く起きて 私の為に握ってくれたらしい。
朝の苦手が彼が、眠気眼を擦りながら奮闘する姿が目に浮かんだ。
「ちょっと見た目はアレだけど、出来れば食ってやってくれるか?環の奴、頑張ってたからさ」
『…勿論です』
和泉兄弟の方に顔を向け、ふわりと微笑んだ。そして、環が握ってくれた巨大おにぎりに齧り付く。
球体のそれは、あまりに大きく。一口では具材に全く届かない。
「前から思ってたんだけど、あんたってさ…笑ったら、より美人だよな」
『ふふ、ありがとうございます。それって、私の事を口説いてるんですか?』
「え?あはは!そうそう、口説いてんの」
「春人ちゃんは、笑ってなくても美人だよ!!」
「春人くんは、笑ってなくても美人だよ!!」
あせあせと、百と龍之介が同時に叫んだ。そんな2人を横目に、一織は若干 引き気味に言う。
「ど、どうしてそんなに本気のトーンなんですか…。その勢いで言うと、まるで本当に口説いてるみたいに見えますよ」
『っぶっ!!!』
「っ!?ちょ、中崎さん!何してるんですか!こっちに米を飛ばしてこないで下さい!」
私がどうして、口から米を噴出するなんて事態に陥ったのか。それは冗談で口説かれたからでも、本気で口説かれたからでも、一織の言葉に動揺したからでもない。
『…三月さん。これ、このおにぎりの中身って』
「あぁ悪い。オレも知らねぇんだ。環、秘密だーって言って教えてくれなかったんだよ」
『そうですか…』
しげしげと具材を見つめる私を、心配そうに窺う百に龍之介。
「思わず口から出ちゃう具材って何?!」
「春人くん、何が入ってたの?」
『多分、プリンです』
誰もが、口を噤んだ。