第66章 しちゃうか〜結婚!
「やったー!今のシュートは凄く綺麗に決まった!ねぇ春人くん!今の見て…」
龍之介が、力強くも精密なシュートで得点を稼いだ、その時。
私はダンディな髭を蓄えた叔父様と、経済について話し込んでいた。
「ほぅ。お若いのに株ですか…」
『まだまだ勉強中なのですが』
そういうわけで、龍之介のスーパープレイも見逃したていた。
「…見て、ないよね。うん。俺、分かってたんだ。そんな気がしてたから…」
「ちょっと龍!相手はもう攻めてきてるよ!点取った後の戻りの速さこそ、強者の要ですぞ!!」
「百さん。尊敬している先輩にこんな事を言うのは失礼かもしれませんけど、和泉三月。言わせていただきます!
あんた一体どの口で言ってんだよ!!」
にわかに騒がしくなったピッチに目をやると、今度は龍之介が項垂れていた。
観客席のボルテージが上がっているところを見れば、おそらく点が動いたのだろう。
が。そんな点の奪い合いよりも、大切な事が私にはある。
「関心ですなぁ。勉強を始めたばかりとは仰るが、なかなかどうして先見の目がありそうだ。
ちなみに…そんな貴方の、いま一押しの銘柄をお伺いしても?」
『そんな、恐縮です。
そうですね…いま注目しているのは、第三精巧という会社です。派手な宣伝は打っていませんが、あの会社が作っている照明設備は実に素晴らしい。世界に誇れる技術です。
私どもも、日頃ライブ等で相当お世話になっているんですよ』
一気に喋ってから、ちらりと紳士を見上げる。すると彼は、嬉しそうに肩を揺すった。
「…ははは。我が社の事を、そんなふうに評価して下さって。こちらこそ恐縮してしまいますなぁ」
『え……我が社…?』
「申し遅れまして。実は私、第三精巧の代表を務めておるんですよ」
『…こんな偶然が、本当にあるんですね。驚きました』
「なにか、運命的な物を感じますな」
知らないはずが、ない。当然リサーチ済みだ。彼が今日、運動好きの息子と共にここへ来る事も。隠れ優良企業の社長だという事も。
「たしかに現時点で、我が社は 派手な宣伝は打っておりませんが。後に広報に力を入れる際は、一緒に仕事をしたいものですな」
『そうですね。その時は、ご満足頂けるように全力で努力致しますよ。弊社自慢のアイドル達が』